1.腹立たしい
色々なことが腹立たしい。静寂を保てない環境が腹立たしい。自分の定規でしか測らない人が腹立たしい。そんな自分が腹立たしい。ただし腹立たしい気持ちを感じやすいこととその気持ちを他人に向かって表明することとは直接関係がない、つまり実は怒ってるけどそれを表に出さなければ人から短気だとは思われない。その1腹立たしい、要は怒ってもいいけど怒ってると思われちゃだめなのである。
2.涙ぐましい
自分の境遇を思う時はいつだって涙ぐましい、つまり自分が一番可愛い。だってそれは当たり前のことで、自分は他人になれないのだからどんな尺度を用いたって自分が一番に決まっているのだ。だから僕だけじゃなくて例えばあなたもあなたが一番可愛いはずである。僕は頑張っている、僕はまとも、僕は偉い、最大級の褒め言葉を用いて僕をねぎらってあげる、そこには涙ぐましい努力がある。決して他人と比較なんて出来るものではない。その2涙ぐましい、要は自分が一番愛しているのは自分なのである。
3.いやらしい
男子たるものいやらしい。と思うのは自分が男子だからであって女子だって女子たるものいやらしいと思っているかも知れない。男子と女子は相いれない、そこが一番の魅力である。死後の世界を想像出来ないように、女子の世界を想像できない、生死と男女は同じくらい深い溝があって、わからないからこそ気になるし知りたいと思う。その3いやらしい、要は性欲に本能以外の理由がほしいのである。
4.おそろしい
自分なら絶対やらないことをやってしまう人、自分なら絶対思いつかないことを思いついてしまう人がおそろしい。理解の外はおそろしさしかない。また逆もしかり、他の人が疑いなくやっていることに対してそれってどうなのという固定概念的な思いを不意に抱いてしまっている自分に気付くとそれもそれでおそろしい。おそろしいものには近寄りたくない、関わり合いを断ちたい、捨ててしまいたい。その4おそろしい、要は僕の脳のキャパシティの中で展開出来るものごとが好みである。
5.待ち遠しい
楽しみに待っている時間が一番楽しい。実際それに直面すると、その時その物事をよい思い出にしなければならないというプレッシャーに潰されてしまいそうになる。失敗は許されない、こんなに待ち遠しかったことをうまく楽しめないなって絶対にあってはいけないことだ。その5待ち遠しい、要は遠足は帰ってからああ楽しかったと一息つくまでが遠足なのである。
6.懐かしい
懐かしいと思えている状況が非常に好ましい。過去のどんな悪い思い出も今思えばああ懐かしいの一言で過ぎ去ってゆく。そして自分の懐かしい思い出を共有している人は少ない。時間はどんなによい記憶も、悪い記憶も、差別なく洗っていく。それは今の僕じゃない、確かに僕だけど、今の僕じゃない。その6懐かしい、要は今何かあっても十年経てば少しは救われるはずと思って頑張るしかないのである。
7.名残惜しい
ものより思い出なんて絶対に嘘なのである。それはくらべるものではない、思い出を助けるのがものであるに違いない。僕はものをたくさん持ちたい。持っているということを尺度にしたい。僕は色々なものに囲まれて生きて、囲まれて死にたい。所有したい、ずっとそばにあってほしい、帰ったらそこにあってほしい。ものに思い出は宿る。その7名残惜しい、要は劣化による代替えほど悲しいことはないのである。
8.まどろっこしい
単純明快シンプルさこそ求めるべき状況である。何事もわかりやすいに越したことはない。腹を探りたくなんて絶対にない。わかってほしいしわかりたい。腹を見せて歩きたい。自分の気持ちを自分の言葉でしか表現できないことのもどかしさ、加えて自分の口の下手さに辟易とする。僕はそんなに深いことを考えられる人間ではない、もっと単純に、素直に、幼稚に、わかりやすい感想を伝えたい。その8まどろっこしい、要は単純さを見抜かれたいのである。
9.あほらしい
平和である。あほにあほと言っていい状況、言っていい間柄、言っていい空気感、そこには平和しかない。ただしあほからあほを作る必要がある。決して真面目からあほを作ってはいけない。真面目を茶化す人間ほどだめな人間はいない。そこはわきまえなければいけない。強引に平和を作る必要はない、隙を見ていけるところにいく。その9あほらしい、要はその薬の服用の方法を間違えてはいけないのである。
10.やさしい
僕はちっともやさしくなんかない。幼いころからやさしいやさしいと言われ続けて勘違いをしていたが、僕はちっともやさしくなんかない。僕は誰からもやさしくされたくて、人の顔色を窺っているだけだ。他人の気分を害さなければきっとやさしくしてもらえるはずであると心の底では思っている、そう思うように育ってきてしまっていると気付かされる。僕は他人のやさしさを引き出そうとしているえげつない人間だということに、やっと気付いた。その10やさしい、要は僕は誰からも嫌われたくないとびきりの臆病ものなのである。
11.恥ずかしい
積極性を打ち消そうとする一番のくせものである。僕は他人の行動すら恥ずかしい、自分がやっている訳でもないのに、もし自分があれをやっているとしたらという想像で顔が真っ赤になる。なるべく恥ずかしくない生き方がしたい、悪目立ちをしたくない。誰の目から見ても真っ当な、あるいは感心される、あるいは冷静に評価される、そういう立場に憧れている。その11恥ずかしい、要はどんな環境であっても一番の先輩になってしまうのが良いのである。
12.誇らしい
この気持ちがないと自分が自分でいられない。僕はどういう人間で、どういうことが出来て、どういうことがわかって、そういうことを一番理解しているのはやはり自分なのである。その12誇らしい、要は僕を誇らしいと思ってくれる他人はとても稀有でありがたい存在なのである。