2012/01/05

タイに二円を送る件

何て言うのか家にばかりいると塞ぎこんでしまうので、たまにはこうだらだらと歩いてみるのもいいかと思い立ち、眠りに落ちる布団の中で「あしたは歩こう」と決意する。

僕は幼稚園から小学校へあがる時に、同じ市内にある別の町へ引っ越したのだが、今住んでいるところから元々住んでいた町へは街道を十五分くらい車で走ればついてしまう。第一弾として、目的地をそのあたり、経由地を気ままに決めて歩いてみようという企画を思いつく。伊集院光のラジオのポッドキャストで聴いてないやつが溜まっていたので、それを耳に入れながら歩くこと三時間あまり。なるべく細めの住宅街をうろうろと歩いていると何だかいい感じ。幼稚園の時に住んでいたアパートには入居者が全然いない様子で、よく遊んでいた広場も思っていたより小さく感じました、という定番の物悲しさに酔いしれながら、何か発想のおかずになるものがあればいいなあなどと歩みを進めていたが、おなかが空いたあたりでこの日は帰宅。

第二弾は大みそか。「大みそか大さんぽ」と心の中で題して、今度は逆方面へと行ってみる。今度は全く知らない道になるので前回よりもドキドキが増す。線路の方角さえ覚えていれば適当に歩いても帰れるはずだと思いずんずんと知らない方面へ。結構自分の、何と言うのか、頭の中に描いた地図上のどこに自分がいるのかちゃんと理解できる能力、みたいなものに自信がある。だから「今右に曲がったから、僕は今こっちの方角を向いてるはずで・・・」みたいなことを考えながら散歩をするのもなかなか楽しいもの。

途中立ち寄った本屋さんで、なんか面白そうな漫画とか小説とかあったらメモして行こうと思い立ち、それでこれはちょっと気になるかもと思ってメモしておいたのが「パーツのぱ」という漫画。
この日はスマートフォンのアプリで自分が歩いたルートと距離と歩行時間とその他もろもろを記録しながら歩いていたので、帰ってからそれを見ておおーと思った。三時間弱で十二キロくらい歩いたらしいという話だった。





元旦は高校時代の友人と再会。前日メモしていた「パーツのぱ」が気になっていた僕はとりあえず連れだってブックオフへ。新春で安くなるだろうと思って行ってみると案の定半額セールをやっていて、見ると「パーツのぱ」の一・二巻が置いてある。ということで購入してみました。
その日その友人とは特に何をするかみたいなことは決まっておらず、じゃあ何かランダム性のあるゲームをやって、それである特定の数字を決定し、その数字の分だけ駅を越え、降りた駅の周辺を適当にぶらつこうという話になった。

いろいろ試した結果、何か数字をランダムに決めるというのが難しく、結局駅の料金表を見て目的地を決めることに。僕らは高校時代ラグビー部だったこともあり、どの駅名の高校のラグビー部が一番弱そうか決めて、その駅へ行ってみようということになった。つまり「東京駅」だったら「東京高校ラグビー部」という感じに駅名を高校名に当てはめていって、一番弱そうなラグビー部へ行こうという話。(実際の東京高校ラグビー部は結構な強豪)

みたいな感じで降り立った駅(名誉のために言わないけども)にはもう畑がありました。という感じで丁度いい具合の田舎駅。ぶらりぶらりと歩いている内にこの日もかなり長距離な散歩になってしまう。「方角的にとりあえず右折したい!」と思っていたけれども一向に右折が出来ないのは何故かと言うと、進行方向右側に自衛隊の基地があったので曲がれませんでしたという話。結局僕らは基地の周りを一周するのに多分二時間くらいを費やし、疲れた足で帰宅をすることに。しかしながら久しぶりの友人と長く話が出来たのは収穫。思い出したが「パーツのぱ」も買ってある。





さっそく読んでみた「パーツのぱ」が面白い。一回二ページから四ページあまりの短い内容になっていて、ストーリーは秋葉原のPCパーツショップ店員たちの日常を描くというもの。僕は別にPCについて何ら詳しい訳ではないが、登場人物たちの言動が魅力的でさくさくと読み進めてしまい、あっという間に買ってきた一巻と二巻を読み終えてしまった。

調べてみると既刊は五巻まであるらしい。そういえばこの漫画を知るきっかけになった本屋にもそれくらいの巻数が置いてあった気がする。あの本屋あまり遠くなかったし、明日行ってみよう。という訳でこの日は就寝。

翌日の午前中にその本屋へと行ってみると、正月二日ということもあって店内はガラガラ。それは別にいいとして、漫画のコーナーへ行くとやはり一巻から五巻までがそろっている。ということで三巻四巻五巻を購入。





帰り道。僕は喉が渇いていることを思い出した。というのも、前日の夜暖房に当たり過ぎたせいか、なんだか喉が乾いていて、具体的には「いろはすのみかん味のやつ」が飲みたかった。当然朝起きて水を飲んで満たされはしたが、もうそれが気になりだしたらどうしても飲みたくなって、本屋の帰りに買って行こうということになる。帰り道にコカコーラの自販機がなかったかきょろきょろと探してみると結構あちらこちらにあるもので、しかしながらみかん味のいろはすは中々置いていない。まあ別に自販機になかったらコンビニに行けばいいだろうということで、家の近くのミニストップへ入ることに。

目的のものを持ってレジへ行くと、先頭に子供、次に若い夫婦が並んでいる。その後ろに並んだ僕は何とはなしにレジの方を見ていた。先頭の子供は甘いパンと十円ガムを三つばかり買っている様子。そう言えば僕も小学生のころ、このコンビニで十円ガムをがむしゃらに買いあさり、店員を困らせたことがあったような気がする。というようなことを考えながら見ていると、その子供へ店員のおばさんから二円のお釣り。しかし子供はそれを受取らず、ただぼそりと「タイに」と呟いた。店員はその言葉の意図がわからないのか何度か聞き返す、僕も彼が何を言いたいのかわからず注目していると、店員はレジの横に置いてある透明な募金箱を指し「これのことかな?」と聞き、彼は頷きそのまま去っていった。

それはタイで洪水の被害にあった人達を助けることを目的としたお金を集めている箱であった。彼は何と言うのか、大抵の大人は持っているはずの愛想をまだ身につけていない状態であり、子供特有の素っ気なさがあって、しかしながらその行為というのは「良いこと」であったから、何だか店員のおばさんは一瞬戸惑ったような様子で笑っていたが、その気持ちは僕も痛いほどわかった。同じように戸惑った風な次の夫婦と顔を見合わせて「い、いい子だなあ」みたいな会話をしていて、別にその夫婦はお釣りを普通に受け取り、僕は百二十六円をきっかり払って店を出た。






結局僕は年末年始の一週間あまりでフルマラソンくらいの距離を歩いたんじゃないかしらという話。二円をタイへ送った彼は偉いけど「タイに・・・」ってのがなんかおもしろい感じだったっていうだけ。