友人のデビルスコーピオン君から「虫と歌」という漫画をかれこれ二年ほど借りている。もともと彼の家に遊びに行ったときに、ちょっといい漫画があるから読んでみなよと勧められたものだったのだが、その時はなんとなく気が進まなくて、じゃあ借りて家で読むわ、ということになったのである。彼はこの漫画および作者にかなり惚れ込んでいるらしく、古本屋でこの漫画を見つけては買い求め、人に貸して回っているらしい。
なぜ二年も借りているかと言えば、単純に読んでいないからである。なんというかこの漫画は、僕の趣味にはまっていないような感じがしている。
僕の好きな漫画のジャンルは、つまらない四コマ漫画。つまらないというのは、その文字通りの意味よりかは「平凡」というか「何も起こらない」というかそんな意味で、おおざっぱに言ってしまえば「あずまんが大王」から始まったようなほのぼの日常系の四コマ漫画が好きなのだ。そういう漫画の良いところは、読んでいる自分の浮き沈みがないところで、面白くもなければつまらなくもない、しかしながら読んでいて退屈ではないから、読み続けることはできる。そういうところが好きで、本屋に行くたびにつまらなそうな四コマ漫画はないものかと探している。難しいのは読み進めるのも億劫な、文字通りの意味でつまらない漫画も結構あるということだがそれはまた別の話。
そういう漫画が好きな理由はまさに「何も起こらない」からで、仮に僕自身の精神状態がゼロから十まであったとして、そういう漫画を読んでいるときはずっと五でいられるのだ。仮に苦難を乗り越えて大成功を収める物語があったとしたら、数字は読み始める前が五だとして、五→一→十ということになると思うが、この一度でも一に下がってしまう時の精神状態に耐えられないので最後に十が待っていると知っていてもつらい。また仮に、何かこう考えさせられるような知的な内容の漫画があったとして、そういうものを読んだ時の「うーんなるほどお、ということは・・・」みたいなことを考えなくてはならないのがとても億劫というか、要するに僕はやわらかいクッションに腰掛けていたいのであって、固い椅子に座って姿勢よくしていたくないのである。要せているのかはわからないけれどそういう感じのこと。
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僕はアイスの棒を噛むのが好き。噛んで噛んで、しわしわになって木がほぐれてしまったら反対側を噛んで噛んで、反対側もそうなったら捨てる。そういうことを棒のアイスを食べる度にする。別に僕は噛めるものなら何でも噛む。ストローでもチュッパチャップスの棒でもペットボトルのキャップでも噛む。(ペットボトルのキャップを噛んだ時は口を切った)
なぜそれをするのが好きなのかわからないが、恐らく意味がないから好きなのだ。意味がないけど身体が動いていて、それでいて時間が経過している。何もしていない訳ではないが、とりたてて何かをしている訳でもない、しかしながら時間は食っている。そういう理由で僕はアイスの棒なりなんなりを噛む。タバコを吸う人が「口がさみしいから」みたいな気持ちに似ているのかも知れない。僕はタバコを吸わないけれど。要はおしゃぶりということか。
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そして僕は散歩が好き。いつも家を中心にして歩いて行ける範囲を歩いているのでもう大分行き尽くして飽きてはいるが、散歩はかなり時間を食う上についでに身体にも良い。散歩というのは外を適当に出歩くことこそが目的なので、そもそも暇だなあという感覚がない。これが素晴らしい。
最近何もせず家にいて何となくツイッターなりを見ていると「なんだこの時間は」と思うことがたびたびある。こういう時、散歩はとりあえず外を歩くというだけで目的が達成、しかもすごく時間を食うということで、何もしていない時間が不安だという時にはうってつけなのだ。
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という訳で、つまらない四コマ漫画とアイスの棒を噛むことと散歩の関係。何もしていない時間を何かしている時間に変えることができる上に、自分の心持ちにはあまり変化がない。何となくぽやぽやしていたら、おおもうこんな時間か、さっさと寝るべ、という風になっちゃう。これこそがこの三つの共通点。要するに僕は面倒くさがりだけど何もしていないのは不安なので、何かしていたい、でも面倒なのはいやーなどうしようもない性格なので、真面目なものとか真剣なものに向き合うことに向いていないのだ。
何と言うか、ほのぼの日常系の四コマ漫画って最近流行っている気がするが、こういう理由で好んでいる人は結構いるのではないかと思っている。やる気がないというか怠惰というか真剣な議論が苦手というかまあそれは全部僕のことになるのだろうが、そういう人って今たくさんいると思う。そういう人って、そういう漫画好きそうだと思う。
そういう漫画を僕は「つまんなおもしろい漫画」と勝手に呼んでいる。これはともするとただのつまらない漫画になってしまうというか、かなり線引きがあいまいなので感覚を共有するのは難しいと思うしその辺は個人の趣味でいいだろう。
だからちょっと申し訳ないけれども、まだ虫と歌は読めていない。いつも目には入っている。読まなきゃなあとも思っている。でもなかなか「読もう!」という決意が湧いてこない。次にデビルスコーピオンに会う日を決めたら、その前日に読もうとは思っているのだが、次はいつ会うことになるのだろうか。
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「平成生まれ」という漫画の登場人物の名前わすれたけどその人。この漫画はジャストつまんなおもしろいって感じで好きです。ほのぼの日常系四コマ漫画定番の女子高生もの。
