ふと気がつくと休日に何をして良いかわからず、ただいたずらにベッドの上で時間が流れるのを待っていたりして、腹が減ってはコンビニへ行き、眠くなれば寝て、そういう風に過ごしているとああ僕というやつは人付き合いが苦手苦手とは言うものの結構人が好きなんじゃないかなんて思えてきたりする、ふと部屋を見ると本棚に読んでいない漫画がぎっしりと詰め込まれていて、何だかもう読むのがつらいと思ったら次の瞬間いらないものになってしまい、思いきって大胆に仕分けをしてみると何とも清々しい晴れやかな気持ちになった。そしていよいよさて僕は余暇に何をして過ごすのがうれしいのかわからなくなって、ベッドに腰掛け何とは無しに部屋の隅をじっと見たりしていた。
今週はゴールデンウィークが明けた最初の一週間だったのでいつも以上に仕事に身が入らずやはりモチベーションは他人本位、僕の為じゃなくて僕が失いたくない大切な他人たちの為に働くべきなのだという考えをぽやぽやと脳内に浮かばせながら、特に今週は新入社員たちが我が部署へ研修にやってきているのでその世話係をするなどする中で、みんな、僕は頑張って仕事をしているぞという気分に浸ったりしていた。
僕には長いこと、具体的には二年間ほど先輩社員がおらず、同じ課の中で僕の上が課長という時期が続いていたから、仕事は誰かに教わらず自分で勉強したことがほとんど、重ねて課長も頼り甲斐のない存在だったので独学我流で労働に勤しむこと二年、そしてこの春からついに先輩社員のいる部署に異動になり、よしよし僕は彼からたくさんのことを盗んでいかなければならないぞという気持ちであったのだが何と彼は五月末をもって退職してしまうことがわかり酷く落ち込んでいたのがここ数日。新しい課長には「君はそういう(先輩がいない)宿命みたいなもの持ってるのかもね」などと言われて、確かにそうかも、なんて思ってみたりした。
数日前ポストにマンションの壁の塗り替えをしますという大家からの手紙が入っていたのに気付いたと思ったらある日突然マンションの周りを囲むように足場の鉄骨が組まれていて、鉄の足場のアーチをくぐって玄関まで辿りつかなければならなくなったりした。それ自体に特に不満がある訳ではないし、例えば塗装業者が足場を組む為にベランダの物干し竿を勝手に地面へ落としていたり、玄関先にかけてある傘を別の場所へ移していたりしたが別にそれも何とも思わなくて、偶然顔を合わせた大家が「どうもすみませんね」などと言うのに「いいえ」と返してこの「いいえ」って難儀な表現だよななんて思っていた。休日は近所の川の周りを走っていて、自分でここがゴールだと決めた場所で止まって歩いて帰っていると同じように運動してきたような格好をして汗を光らせる青年が一人僕の前を歩いているのに気がついて、何だか嫌な予感がするなと思ったら何と彼は僕の隣の部屋の住人であった。僕が住むマンションの同じ階には二部屋しかないので唯一の隣人だが顔も見たことが無ければ喋ったこともなかったので、そうかこういう人が住んでいたのだななんて思い、彼が階段を上がっていくのを傍目に余計に家の周りを一周してから自分の部屋へ戻ったりした。大家といい隣人といい普段会わない人に会ったものですごくどきどきしてしまったのが今週のこと。人見知りなのは治らないがついに虫歯が治って、ガムを噛む時左の奥歯が痛いぞと思い中学生振りくらいに歯医者へ行くと思った通り、左の奥歯は過去に治療をしたことのある歯だったのだが詰め物の下に虫歯が出来てしまっていたらしく、そして右の奥歯の親知らずと接しているところ、合わせ鏡を使わなければ見えないような難しい場所にも虫歯があることがわかり、これは恥ずかしいなと思いながらすぐに削ってもらい仮の詰め物が入っている状態で数日、先に左、次に右を治してもらい晴れて虫歯が完治したのだった。初めて歯ぐきに麻酔をするという体験をしたのだが、初めこそ緊張したものの慣れると早く麻酔をしてくれという気持ちになってきて、特に最後右の詰め物を入れる時に衛生士のお姉さんが「今日は麻酔ありませんからね~」と言うのに(えっないの?)と思いながらわかりましたと答えたりしていた。削って神経が近くなった歯に風を当てて乾かすという工程がかなり痛くて、ああでも女性は出産の痛みがあるんだよな、それに比べれば大したことない、何とか我慢しようなんて何故だかそんなことを思いながら風を受けていたりした。前日深酒をしたのだが歯医者の予約は二十時からだったのですっかり覚めていて、その時間に予約を入れた過去の自分を褒める。
歯医者の前日僕は瑞江という駅にいて、大学時代の先輩と後輩と三人で酒を飲んでいた。それ自体はいいとして問題は帰りの電車、久々に深く酒を飲んでしまった僕は前後不覚、二回の乗り換えを経て地元に帰らなければならないのだが二回目の乗り換えの記憶が全くない、気付くと終点で、シートをバンバン叩きながら終点です終点ですと叫ぶ駅員に起こされ電車から飛び出る。終点まで乗ってしまったすぐに戻らなければという気持ちになり反対側のホームへ急ぐ、とその前に一体ここはどこなのだ? と思い、酔っ払った時特有の狭い視界の中、駅の名前が書いてあるものを探してみるとなんとここが地元駅。偶然にも終点が地元の駅である電車に乗れたようなのである。そして僕はこの電車に乗った記憶が全くない、ああこれは帰巣本能だなあなどと思いながら歩いて帰宅し、ばたりと倒れて気付くと朝五時。どうしたものか長く眠れないのが最近の悩みであった。
来週は映画を観に行く約束をしたのでつまり僕にはやることがある。やることがあるというのは幸せなことで、やることが無い時にでは僕は一体何をやりたいと思っているのだということを真剣に考えてみるとこれは三つあった。一つ、食品サンプルを作ってみたい。二つ、本格的な家庭菜園をやってみたい。三つ、女性用の下着をデザインしたい。好きな女性の服装は、形よりも色。ビビットなカラーの目立つファッションが素敵だと思う。そして例えば白身を剥いたら黄身が出てくる茹で卵のように、やさしい色遣いの服装の下にキツい原色の下着をつけていたら、なんて思うとたまらない。ツタヤのAVコーナーよりもデパートの下着売り場に入ってみたいと思ったのがごく最近のことである。